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手術前に自分の声を残す方法まとめ|自宅録音のコツ・メッセージバンキング・AI音声保存

費用をかけずに今日からできる残し方と、AI音声にする場合との違い

手術前に声を収録する様子のイラスト

喉頭摘出など、声を失う可能性のある手術を控えたとき。「自分の声」をそのまま残せるのは、手術の前だけです。

この記事では、費用をかけずに今日からできる「スマホでの自宅録音」と「メッセージバンキング」を中心に、何を録るか、録った声をどう使うかをまとめます。自宅録音で残るのは、録った言葉をそのまま聞き返せる声です。文字を入力して自分の声で読み上げるAI音声にするには、これとは別に専用スタジオでの収録(自費)が必要になるため、その違いも説明します。

声を残せるのは、手術の前だけ

なぜ「いま」なのか

喉頭全摘出術では、声帯を含む喉頭ごと摘出するため、これまでの声(声帯を使った発声)は手術のあとには出せなくなります。食道発声や電気式人工喉頭などの代用発声で会話は取り戻せますが、それは「話す手段」であって、手術前の自分の声そのものではありません。術後しばらくして、自分の声がどんな声だったか思い出せなくなり、古い録音を探したという方もいます。

だからこそ、自分の声を残せるタイミングは手術の前だけです。名古屋大学のSave the Voiceプロジェクトでも「手術で音声を失ってしまう前に音声を保存する」ことが出発点になっています。方法は大がかりなものだけではありません。今日からできることも含めて、順に見ていきます。

方法1: スマホで自宅録音する

今日からできる、いちばん手軽な方法

スマホの録音アプリ(ボイスメモなど)があれば、今日から声を残せます。コツは、テレビやエアコンの音が入らない静かな部屋で、口とマイクを近づけすぎず、いつもの話し方で録ること。原稿の朗読よりも、家族の名前を呼ぶ言葉、いつもの口ぐせ、「おはよう」「ありがとう」のような日常のフレーズのほうが、あとで聞いたときに「その人らしさ」が残ります。

何を録るか迷ったら、次のようなものから始めてみてください。家族一人ひとりの名前を呼ぶ声。「おはよう」「おやすみ」「ありがとう」「大丈夫」「気をつけてね」のような毎日の言葉。名前を入れた「○○、誕生日おめでとう」。いつもの口ぐせや笑い声。好きな歌の一節。お孫さんに読む絵本を1冊。自分の生い立ちや、結婚したころの話。電話に出るときの「はい、○○です」。どれも数十秒で録れます。

一人で話すのが難しければ、ご家族が聞き役になって会話を録るのがおすすめです。質問に答える形のほうが、原稿を読むより普段の話し方が残ります。一度に長く録る必要はありません。体調のよいときに、数分ずつ何回かに分けて録りためましょう。

録音した音声は、スマホ本体だけでなくクラウドや家族のパソコンにもコピーし、消えない場所に保管しておくことが大切です。ファイル名に日付と内容を入れておくと、あとで探しやすくなります。

  • 静かな部屋で、いつもの話し方で録る
  • 朗読よりも、家族への言葉・口ぐせ・日常フレーズを
  • 家族が聞き役になって会話を録ると、普段の話し方が残る
  • 数分ずつ録りためて、クラウドなど複数の場所に保管

iPhone のボイスメモの使い方

iPhone なら、最初から入っている「ボイスメモ」で十分です。次の流れで録れます。

  • Android のスマホにも標準の録音アプリがあり、流れは同じ
  • 録ったら、スマホ以外の場所にも必ず複製を残す
  1. アプリを開く

    「ボイスメモ」を開きます。ホーム画面に見当たらないときは「ユーティリティ」フォルダの中にあります。

  2. 録音する

    赤い丸の録音ボタンをタップすると録音が始まります。途中で一時停止して、また再開できます。マイクに近づけすぎると音が割れるので、口から少し離して話します。

  3. 保存して名前をつける

    停止ボタンをタップすると保存されます(一時停止しているときは「完了」をタップします)。名前は「新規録音」か、位置情報サービスがオンなら現在地の地名になるので、録音をタップし、名前の部分をタップして「家族の名前・ありがとう 9月7日」のように内容と日付に変えておきます。

  4. iCloud にも残す

    「設定」アプリの iCloud の項目で「ボイスメモ」をオンにしておくと、録音が iCloud に保存され、同じアカウントの iPad や Mac にも表示されます。

  5. 家族にも渡す

    録音をタップし、「その他の操作」ボタンから「共有」を選ぶと、AirDrop・メール・メッセージで家族に送れます。同じ画面で「ファイル」に保存を選ぶと m4a 形式でファイルアプリに書き出せるので、パソコンやほかのクラウドにも移せます。

方法2: メッセージバンキングという考え方

「伝えたい言葉」を先に録っておく

メッセージバンキングは、将来自分の声で伝えたい言葉——家族の名前の呼びかけ、「いってらっしゃい」「おめでとう」、感情のこもった言い回しや笑い声——を、元気なうちに録音して「預けておく」考え方です。声を失う可能性のある病気と向き合う人たちの間で広がってきました。

録音そのものは方法1と同じくスマホでできます。違いは「何を録るか」を先に決めておくこと。伝えたい相手と場面を思い浮かべてリストを作り、ひとつずつ録っていきます。お子さんの卒業や結婚、お孫さんの誕生といった先の節目に向けた言葉を、宛名と日付をつけて残しておく方もいます。

録りためた声の使い道

AIを使わなくても、声は暮らしの中で使える

自宅録音は、術後の暮らしの中でそのまま使える声です。

たとえば、通信事業者によっては、留守番電話の応答メッセージを自分の声にできます。「ありがとう」「ちょっと待って」「大丈夫です」のような短い言葉を切り出して、録音した音声をボタンで再生できるアプリに登録しておくと、術後に声が出ない時期でも、タップひとつで自分の声で返せます。家族への誕生日メッセージは、その日に再生してもらえるよう、宛名と日付をつけて家族に預けておくのも一案です。声だけでなく動画も撮っておけば、表情や仕草も一緒に残ります。

メッセージアプリの音声メッセージは、サービスによって保存期限があります。たとえば iPhone の「メッセージ」で送った音声は、送信または再生から2分で消える設定が標準です(設定で有効期限を「なし」にできます)。送っただけで安心せず、端末やクラウドにも必ず複製を残してください。

AI音声にする収録は自費で、すべての方が選べる選択肢ではありません。ここまでの方法は費用をかけずに今日から始められ、それだけでも声は残せます。

  • 通信事業者によっては、留守番電話の応答を自分の声にできる
  • 短い言葉を切り出して、ボタンで再生できるアプリに登録する
  • 節目のメッセージは宛名と日付をつけて家族に預ける
  • 音声メッセージは保存期限に注意。端末やクラウドにも複製を

方法3: AI音声の素材を専用スタジオで収録する

録っていない言葉も自分の声で話したい場合

文字を入力すると自分の声で読み上げる「コエノコ合成」のようなAI音声を作るには、その素材となる声を手術前に収録しておく必要があります。コエノコでは品質を一定に保つため、合成・変換の素材を、コエノコが専用スタジオで収録した手術前の声に限っています。スマホで録った自宅録音や、過去の録音の持ち込みには対応していません。

収録と合成は別の工程です。収録は手術前に素材を残す工程で、合成はその声からアプリを作る工程です。合成ができると、録音していない言葉でも文字を入力すれば自分の声で読み上げられ、術後すぐの声が出ない時期や、電話での手続きなどに使えます。自宅録音とは目的が異なるので、どちらか一方を選ぶ必要はなく、併用もできます。

コエノコ収録は自費で、費用はご相談内容に応じた個別見積りです。進め方は、収録の流れをまとめた記事にあります。

過去の録音(ホームビデオ・留守電)から作れる?

正直なところ、制約は大きい

「手術前の録音を逃してしまったが、昔のホームビデオや留守電の声から合成できないか」というご相談は少なくありません。技術としては過去の録音から声を合成する試みも存在しますが、雑音・録音時間の短さ・話し方の偏りといった制約で、本人らしい声質を再現することは一般に難しく、医療向けのサービスでは対応していないことが多いのが実情です。

コエノコも、現在は過去の録音からの合成には対応しておらず、手術前の収録を前提としています。だからこそ、手術の予定が見えた段階で、できるだけ早く録音を始めておくことをおすすめします。

相談先の整理

主治医に聞くことと、コエノコに聞くこと

自宅録音に、コエノコへの申込みや紹介状は要りません。体調のよいときに、自宅や外来の合間で進めてください。医師から発声を控えるよう言われている場合は、その指示を優先してください。

スタジオ収録を考える場合、手術日までの日程調整はコエノコが行います。手術日、体調や声の状態、スタジオの空き状況を聞いたうえで、対応できる日程をご案内しますので、主治医に確認しておいていただくのは「手術日と入院日」で足ります。治療の話し合いの場で切り出しにくければ、先にお問い合わせください。伝え方から一緒に考えます。

ご本人の体調がすぐれないときは、ご家族が代わりに問い合わせて構いません。ご家族からのご相談も多くいただいています。

よくある質問

何を録音すればいいですか?
原稿の朗読よりも、家族の名前を呼ぶ言葉、いつもの口ぐせ、「おはよう」「ありがとう」のような日常のフレーズがおすすめです。あとで聞き返したい言葉を、静かな環境で、いつもの話し方で録ってください。
どのくらいの長さを録音すればいいですか?
自宅録音は、一度に長く録る必要はありません。数分ずつ、体調のよいときに分けて録りためてください。量よりも「静かな環境」「自然な話し方」という質のほうが大切です。コエノコ収録で必要な分量は、収録の流れの記事でご案内しています。
自宅録音だけでも声は残せますか?
はい。録った言葉や話し方をあとで聞き返すことが目的なら、自宅録音で残せます。留守番電話の応答や、短い言葉をボタンで再生するといった使い方もできます。ただし、録っていない言葉まで自分の声で読み上げるには、手術前の専用スタジオ収録が別途必要です。
手術まで時間がありません。間に合いますか?
まず今日、スマホで数分でも録音を始めてください。それだけでも声は残せます。スタジオ収録を希望される場合は、手術日、体調や声の状態、スタジオ・スタッフの空き状況を確認したうえで対応できる日程をご案内しますので、できるだけ早めにお問い合わせください。
本人の体調が悪いので、家族が代わりに問い合わせてもいいですか?
もちろんです。ご家族からのご相談・お問い合わせも多くいただいています。ご本人の体調のよいタイミングで録音・収録ができるよう、進め方から一緒に考えます。
スマホで録った自分の声から、コエノコ合成は作れますか?
いいえ。合成・変換の素材は、コエノコのスタジオで収録した声だけです。スマホ録音は、録った言葉を聞き返すための声として残してください。
手術後ですが、昔の録音やビデオから声を作れますか?
申し訳ありませんが、コエノコは現在、過去の録音からの音声合成には対応しておらず、手術前の収録を前提としています。過去の録音は雑音や長さの制約で本人らしい声質の再現が一般に難しく、医療向けのサービスでは対応していないことが多いのが実情です。

出典・参考

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