声を失うと障害年金はいくら?喉頭全摘出は原則2級、金額と請求できる時期
身体障害者手帳の3級とは別の制度。喉頭全摘出なら1年6か月を待たずに請求できます

手帳が3級だったから、障害年金も3級。そう考えてしまいがちですが、そうとは限りません。
喉頭を全摘出して発音に関わる機能を失った場合、障害年金は原則2級です。手帳とは別の制度で、判定の基準そのものが違うためです。金額も、請求できる時期も、手帳とは別に確認する必要があります。
手帳は3級、年金は原則2級 — 基準が別だから数字も違う
喉頭を全摘出して声を失った場合、身体障害者手帳は3級、障害年金は原則2級です。同じ状態なのに数字が食い違うのは、二つが別の制度で、それぞれ別の基準で判定されるからです。どちらかが間違っているわけではありません。
手帳の根拠は、身体障害者福祉法施行規則の別表第5号(身体障害者障害程度等級表)です。3級に「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失」と定められており、喉頭がなくなったことによる音声機能の喪失がこれに当たります。
障害年金の根拠は、日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」です。第6節に、喉頭全摘出手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したものについては2級と認定する、と明記されています。
手帳は日常生活用具の給付などの福祉サービスにつながる入り口、障害年金は収入を支える所得保障です。目的そのものが違うので、片方だけ確認して終わりにしないでください。
- 身体障害者手帳: 音声機能の喪失 → 3級(身体障害者福祉法施行規則の別表第5号)
- 障害年金: 喉頭全摘出で発音に関わる機能を喪失 → 原則2級(日本年金機構の障害認定基準)
- 別の制度なので、手帳の等級がそのまま年金の等級になるわけではない
声が残った場合は、等級の判断が変わります
「声帯摘出」という言葉は、喉頭をすべて取り除く手術を指して使われることもあれば、喉頭を残して一部を切除する手術を指して使われることもあります。障害年金では、この違いが等級を分けます。
原則2級と定められているのは、あくまで喉頭全摘出手術についてです。喉頭を温存した部分切除には認定基準に個別の規定がなく、術後に残った声の状態をもとに判断されます。声のかすれや話しにくさがどの程度残るかは個人差が大きいので、ご自身の手術がどちらに当たるかを含めて主治医にご確認ください。
認定基準は、音声や言語の機能について3つの区分を置いています。2級は「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」で、発音に関わる機能を失うか、話すことと聞いて理解することのどちらか、または両方がほとんどできないために日常会話が誰とも成立しない状態を指します。
3級は「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」です。話すことや聞いて理解することのどちらか、または両方に多くの制限があるため、互いに内容を推し量ったり尋ねたりすることで日常会話が部分的に成り立つ状態を指します。もうひとつの「言語の機能に障害を残すもの」は障害手当金の対象で、これは年金ではなく一時金です。3級と障害手当金はいずれも障害厚生年金の制度で、国民年金にはありません。
いくら受け取れるか(令和8年度の額)
ここでは、喉頭全摘出で原則2級に当たる場合の金額を扱います。障害基礎年金2級の額は、令和8年度(2026年度)で年額847,300円です。昭和31年4月2日以後に生まれた方の場合で、それ以前に生まれた方は844,900円になります。
子がいる場合は加算があります。対象は、その方に生計を維持されている、18歳になった後の最初の3月31日までの子と、20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子です。2人までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円が加わります。
会社員や公務員として働いている間に初診日がある方は、障害厚生年金が上乗せされます。2級の額は報酬比例で、加入期間と給与によって変わるため、金額を知りたい場合は年金事務所での試算が確実です。生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合は243,800円の加給年金額が加わりますが、配偶者自身が老齢厚生年金などの受給権を持つ場合は支給が停止されることがあります。
3級に当たる場合は障害厚生年金だけの支給になり、報酬比例の額が最低保障額を下回るときは635,500円(昭和31年4月2日以後生まれ。それ以前は633,700円)が保障されます。
これらはいずれも令和8年度の額です。年金額は毎年度改定されるため、請求の時点では日本年金機構の最新の案内をご確認ください。
- 障害基礎年金2級: 年額847,300円(令和8年度・昭和31年4月2日以後生まれ)
- 子の加算: 2人まで1人につき243,800円、3人目以降81,300円
- 障害厚生年金3級の最低保障額: 635,500円(同・令和8年度)
いつから請求できるか — 喉頭全摘出には認定日の特例がある
障害年金は通常、初診日から1年6か月を経過した日(その前に症状が固定した場合はその日)の状態で判定します。この障害認定日を待つのは、症状が固まるまでに時間がかかる病気を想定しているためです。
喉頭全摘出には特例があります。認定基準は、障害の程度を認定する時期を「喉頭全摘出手術を施した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)」と定めています。声を失うことが手術によって確定するので、1年半を待つ必要がないという考え方です。
つまり、初診日から1年6か月以内に喉頭全摘出手術を受けた場合は、その手術日が障害認定日になります。支給されるのは障害認定日の翌月分からです。術後すぐの時期に手続きを始められるかどうかは、家計の見通しに直接ひびきます。
手術から時間が経っていても、障害認定日の時点で等級に該当していれば遡って請求できます。ただし遡って受け取れるのは、時効により最大5年分です。
障害認定日には該当しなかった方でも、その後に状態が悪化して等級に当てはまるようになった場合は、事後重症による請求ができます。この場合の支給は請求日の翌月分からで、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。
受け取るには初診日と保険料の2つの条件があります
障害の状態のほかに、初診日の要件と保険料の納付要件があります。障害基礎年金の場合、障害のもとになった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日が、国民年金の加入期間中、20歳前、または日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間にあることが必要です。
納付要件は原則として、初診日の前日の時点で、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料の納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上あることです。
ここには例外が二つあります。20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件そのものが不要です。また、初診日が令和18年3月末日までのときは、初診日において65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ要件を満たします。過去に未納の時期があっても、これで請求できる方は少なくありません。
見落とされやすいのが「初診日がいつか」です。喉の違和感で最初にかかった診療所と、がんの診断や手術を受けた病院が違うことは珍しくありません。障害年金では最初に受診した日が基準になるため、受診の記録を時系列で整理しておくと手続きが進めやすくなります。
なお、身体障害者手帳を持っていることは障害年金の要件に入っていません。手帳がなくても請求できます。
手続きの進め方と必要な書類
請求には医師の診断書が必要です。音声や言語の機能の障害では「聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用」という様式を使います。
日本年金機構は、この診断書について「診断書を作成する前に、必ず、年金事務所等にご相談ください」と案内しています。書き直しを避けるためにも、先に窓口で確認してから主治医に依頼してください。
初診の医療機関と診断書を書く医療機関が違う場合は、初診の病院に受診状況等証明書を書いてもらいます。喉頭がんでは最初に近所の診療所にかかることが多いので、この書類が要る方は多いはずです。
相談先は、年金事務所、街角の年金相談センター、市区町村の国民年金窓口です。病院のがん相談支援センターやソーシャルワーカーに、どこへ相談すればよいかを含めて聞くこともできます。
喉頭摘出のあとは、飲み込みや食事の面にも変化が出ることがあります。認定基準では、音声または言語機能の障害とそしゃく・嚥下機能の障害が同時にある場合は併合認定の取り扱いをすると定められています。当てはまりそうな場合は、診断書を用意する段階で相談しておいてください。
- 年金請求書
- 診断書(聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用)
- 受診状況等証明書(初診の医療機関と診断書を書く医療機関が違う場合)
- 病歴・就労状況等申立書
制度は暮らしを支える。声は手術の前にしか残せない
障害年金も身体障害者手帳も、声を失ったあとの暮らしを支えるための仕組みです。ただし、どちらも失われた声そのものを取り戻すものではありません。
ご自身の声を記録できるのは、手術の前だけです。コエノコは、喉頭摘出などで声を失う前にご本人の声を収録・保存し、術後にご本人の声に近い合成音声で話すことを目指すサービスです。名古屋大学が AMED 事業として取り組む「Save the Voice」プロジェクトの知見をもとに、TARVO株式会社が提供しています。
手術の日程が決まっている方は、制度の手続きと並行して、声を残すという選択肢もあることを知っていただければと思います。
よくある質問
- 「声帯摘出」と言われました。原則2級に当たりますか?
- 手術の内容によります。原則2級と定められているのは喉頭全摘出手術の場合で、喉頭を温存した部分切除には認定基準に個別の規定がなく、術後に残った声の状態で判断されます。「声帯摘出」という言葉はどちらの意味でも使われるため、ご自身の手術がどちらに当たるかを主治医にご確認ください。
- 保険料に未納の期間があります。請求できませんか?
- 請求できる場合があります。納付要件は原則として、初診日の前々月までの被保険者期間のうち納付済期間と免除期間が3分の2以上あることですが、初診日が令和18年3月末日までで初診日において65歳未満であれば、直近1年間に未納がなければ要件を満たします。また20歳前の未加入期間に初診日がある場合は納付要件そのものがありません。ご自身の記録は年金事務所で確認できます。
- 手術から何年も経っています。今から請求できますか?
- 障害認定日の時点で等級に該当していれば、遡って請求できます。ただし遡って受け取れるのは時効により最大5年分です。障害認定日には該当せず、その後に状態が悪化した場合は事後重症による請求になり、支給は請求日の翌月分から、請求書の提出は65歳の誕生日の前々日までとなります。
- 働きながらでも障害年金は受け取れますか?
- 厚生年金や国民年金の加入中に初診日がある場合は、働いていることだけを理由に受け取れなくなる制度ではありません。音声または言語機能の障害は、認定基準のうえでは日常会話が成立するかどうかで判定されます。ただし20歳前に初診日がある障害基礎年金には所得による支給停止があります。審査は提出された診断書をもとに個別に行われるため、年金事務所にご相談ください。
- 身体障害者手帳がないと障害年金は請求できませんか?
- 手帳がなくても請求できます。障害年金の要件は初診日、障害の状態、保険料の納付状況の三つで、身体障害者手帳の有無は含まれていません。逆に、手帳を持っていることが受給を保証するものでもありません。
- 障害年金と、電気式人工喉頭などの日常生活用具の給付は両方受けられますか?
- 別の制度なので、要件を満たせば両方の対象になります。障害年金は年金制度による所得保障で、日常生活用具の給付は身体障害者手帳を入り口とする福祉サービスです。給付の内容や自己負担は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉窓口にご確認ください。
出典・参考
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