喉頭摘出後の声はどう聞こえる?シャント発声・電気喉頭・食道発声を動画で聞き比べ
3つの「代用発声」を、実際の声で比べてみる

喉頭を摘出すると、声帯を使ったこれまでの発声はできなくなります。けれど、「声が出せなくなる=もう会話ができない」ということではありません。術後は、食道発声・電気式人工喉頭(電気喉頭)・シャント発声という「代用発声」で、再び会話を取り戻していけます。
ただ、文章で「自然な声」「機械的な声」と説明されても、なかなかイメージしづらいかもしれません。この記事では、実際に代用発声で話している方の動画を見ながら、3つの声がどのように聞こえるのかを比べてみます。
※声の聞こえ方や話しやすさには大きな個人差があります。動画ごとに収録環境や話している方の習熟度も異なるため、ここで紹介する音声は、それぞれの発声方法の「一例」としてお聞きください。
シャント発声の声を聞いてみる
肺からの息を使って話す方法
シャント発声は、気管と食道の間に通り道をつくり、「ボイスプロステーシス」と呼ばれる一方向弁の器具を留置して発声する方法です。肺から送り出した空気を食道側へ通し、食道の入口付近にある粘膜を振動させて音をつくります。
肺からの呼気を使えるため、一度に使える空気の量が比較的多く、ある程度の長さの文章を続けて話しやすいのが特徴です。
動画で話しているのは、喉頭摘出後に筆談や電気喉頭、食道発声などを経験したあと、シャント発声を選ばれた方です。器具メーカーのアトスメディカルによる紹介では、ボイスプロステーシスの留置後およそ2か月で、シャント発声による会話に自信を持てるようになったとされています(習得の早さには個人差があります)。
聞きどころは、一息の長さです。文章がどこまで途切れずにつながるか、抑揚がどれだけ感じられるかを意識すると、あとの2本との違いがはっきりします。
電気喉頭の声を聞いてみる
機械の振動を、口の動きで言葉にする
電気式人工喉頭、通称「電気喉頭」は、振動する機器を首元に当て、その振動を口や舌の動きによって言葉に変える方法です。声帯の代わりとなる「音のもと」をつくるのは、機械です。
代用発声のなかでは比較的練習を始めやすく、安定した音量で話せることが利点ですが、機械による一定の振動を音源とするため、声は平板で機械的に聞こえやすくなります。
動画は、喉頭を摘出して声を失った男性を取材したCBCテレビのドキュメンタリーです。ここでは、言葉の背後に続く機器の振動音に耳を向けてみてください。
誤解されやすいのですが、電気喉頭は機械が声を「読み上げて」いるわけではありません。機械がつくるのはあくまで振動であり、その振動を舌や唇の動きによって言葉にしているのは、話している本人です。
食道発声の声を聞いてみる
器具を使わず、食道に取り込んだ空気で声をつくる
食道発声は、口から食道へ取り込んだ空気を吐き出すときに、食道の入口付近にある粘膜を振動させて音をつくる方法です。電気喉頭のような機器を持つ必要がなく、シャント発声のような器具を留置する手術も必要ありません。
ただし、一度に食道へ取り込める空気には限りがあるため、一息で話せる長さは比較的短くなります。習得には練習が必要で、声の大きさや流暢さにも個人差があります。
動画で話しているのは、全国発声大会の食道発声部門で優勝された、練習を十分に重ねた熟練者の方です。
シャント発声との違いは、区切りの入り方に表れます。どこで息継ぎのような間が入るか、そのうえで文章がどれだけなめらかにつながっているかを聞き取ってみてください。
3つの声を聞き比べると、何が違う?
音のつくられ方が、聞こえ方の違いになる
3本の動画を続けて聞いてみると、同じ「喉頭摘出後の声」であっても、音のつくられ方によって聞こえ方がかなり変わることが分かります。
どの声がいちばんいいかを決める必要はありません。使いやすい発声方法は、体の状態や手術方法、手の使いやすさ、よく話す場面、練習にかけられる時間で一人ひとり違います。複数の方法を場面によって使い分けるケースも珍しくありません。
費用や習得期間まで含めた3つの方法の選び方は、関連記事「代用発声3つの違いと選び方」で詳しく解説しています。
- シャント発声:肺からの呼気で食道入口部を振動。比較的長く話しやすく、抑揚もつけやすい
- 電気喉頭:機械の振動が音のもと。安定した音量で話せるが、声は平板になりやすい
- 食道発声:食道に取り込んだ空気で発声。器具は不要だが、一息で話せる長さは短め
「話せるようになること」と「元の声に戻ること」は違う
シャント発声、電気喉頭、食道発声。どの方法も、喉頭摘出後に再び会話をするための、とても大切な手段です。
一方で、3つの動画を聞き比べてみると分かるように、いずれも手術前に声帯を使って話していた「これまでの自分の声」そのものではありません。代用発声は、失った声帯とは別の音源を使って「話すための声」をつくる方法だからです。
手術前であれば、「今の声」を残すこともできる
代用発声と組み合わせて使える選択肢
喉頭を摘出したあとに、食道発声や電気喉頭、シャント発声を選ぶことはできます。しかし、声帯を使っている今の声を録音できるのは、手術の前だけです。
コエノコでは、手術前にご本人の声を収録し、その音声からAI音声モデルを作成して、術後のコミュニケーションに活用する「声を残す」選択肢を提供しています。これは、食道発声や電気喉頭、シャント発声の代わりになるものではありません。
たとえば普段の会話では代用発声を使い、電話や家族との会話など「自分らしい声で伝えたい場面」では手術前に保存した声を使う。そんな組み合わせ方もできます。
これから喉頭摘出手術を予定されていて、「今の自分の声も残しておきたい」と感じている場合は、手術前の段階で一度検討しておくことをおすすめします。
よくある質問
- 3つの中で、どの発声方法がいちばん自然ですか?
- 一概に「この方法がいちばん自然」と決めることはできません。一般にシャント発声や食道発声では抑揚をつけることができ、電気喉頭では機器特有の音が加わりますが、実際の聞こえ方は話す方の体の状態や習熟度、使用する機器などによって変わります。
- 必ずどれか1つを選ぶ必要がありますか?
- いいえ。体の状態や生活に合わせて方法を選び、複数の代用発声を使い分ける方もいます。どの方法が適しているかは、担当の医師や言語聴覚士、当事者団体の発声教室などに相談して決めていくのが一般的です。
- 動画のように話せるまで、どのくらい練習が必要ですか?
- 一律の期間はなく、個人差が大きいとされています。目安として、電気喉頭は比較的早く練習を始めやすく(早い方で2〜3週間)、シャント発声は術後10〜14日ごろから訓練を開始でき、食道発声は3〜6か月ほど練習することが多いとされます。年齢や術式、体力によって変わるため、担当の医師や言語聴覚士にご確認ください。
出典・参考
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